函館短期大学発「食・健・幸」
食を学ぶことは健康を学ぶこと。健康はすべての人が願う幸せ。

手作りみそ  ~発酵食品の魅力~ レシピ No.8

手作りみそ

 「食品学実験」担当助手  清水 陽子
 発酵食品は食品保存の知恵から生まれました。微生物の力で食品の保存性を高めるという「大発明」を生んだきっかけは、多くの場合偶然の発見でした。発酵食品はおいしく、健康によいということに加えて、地域の食べ物や気候風土の影響を色濃く受けており、民族の歴史を映し文化を担っているという側面も持ち合わせている魅力ある食品です。
 発酵食品の代表的な調味料である「みそ」を作ってみましょう!!



  手作りみそ


< 材 料 (約4kg分) >

 ・麹(こうじ): 1.0kg
 ・大豆 : 1.0kg
 ・塩 : 300g
 ・種水(煮汁) : 600ml

 <器具類>
 ・鍋
 ・ザル
 ・すりこぎ
 ・しゃもじ
 ・ボウル
 ・すり鉢
 ・ホウロウ容器
 ・温度計
< 作 り 方 >
● 前日の準備
(1) 大豆を水でよく洗う。
(2) 洗った大豆に、大豆の2倍以上の水を加えて吸水させる。(夏:6~8時間、冬:14~16時間)

(大豆は水を吸うと2倍の大きさになります)

● 当日の作業
(3) 大きめの鍋に大豆と、大豆が少しかぶる程度の水を入れて沸きあがるまで強火、沸騰間際になったら弱火で煮る。差し水をしながら3~4時間程度煮る。途中、浮いてきた大豆の皮はすくい取って捨てる。
指で簡単につぶせる硬さまで煮えたらOK!
(4) 煮えた大豆を水切りした後、すり鉢に移し大豆が熱いうちにすりこぎでつぶす。
煮汁は種水用にとっておく(600ml程度)
(5) 大きめのボウルに塩と麹を混ぜ合わせ、「塩切麹」をつくる。(板状の麹は、両手ですり合わせるようにしてほぐし、塩がまんべんなくいきわたるように十分に混ぜ合わせる)
(6) つぶした大豆の温度が30~40℃まで下がったら(5)でできた塩切麹を加えてよく混ぜる。(混合が不均一だと酸敗(※1)の原因になる)
(7) 種水を少しずつ加えながら混ぜ固さを調節する。
(市販のみそ程度のやわらかさ、またはそれよりもやわらかめとする) 仕込みその完成
(8) あらかじめアルコールで内側を拭いておいたホウロウ容器の底にうすく塩を敷き、仕込みそをすきまなく押し付けながら詰める。
(9) 表面は平らにし、その上にうすく塩をふる。その上に煮沸消毒したさらし布、または油紙、サランラップ等を密着させ、容器のふたをする。
(10) 容器の口をガムテープや新聞紙などでしっかりと縛る。
(11) 直射日光の当らない涼しい場所(10~15℃)で約3カ月熟成させる。1カ月くらいごとに、しゃもじなどで全体を混ぜる。
※ 熟成の状況は貯蔵温度によって大きく変化します。
(麹菌など微生物の働きによって、分解、発酵が行われます。空気にふれさせて微生物の働きを活発にします。)
 保存中に表面にカビが生えていたら・・・
  カビの生えている部分のみそを取り除く。ふたについた場合は熱湯でよく洗う。みその表面に付くカビはつくり方に問題があるわけではなく、仕込んだ直後の1カ月の気候に左右されるので仕込んで1~2カ月はみその表面を観察してください。カビが生えていてもみその品質、味には影響ありません。みそが成熟してくるとカビは生えなくなります。
(12) (11)を経て約3カ月経ったら完成。
今回のレシピ作成にあたって作成したみそは、3カ月少々かかって完成しました。
 
 ※1.酸敗とは?
  細菌や熱・水分などの作用を受けて酸化および分解し、色・味・においなどが変化して酸味を呈する現象
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【品質検査】
 今回の手作りみそを用い、その成分のうち食塩とアミノ酸態窒素量の定量を行いました。
 食塩の定量は、みそや漬物では保存や呈味上きわめて重要です。また、アミノ酸態窒素(※2)はそのほとんどが遊離のアミノ酸(※3)に由来するものであることから、みそやしょうゆなどの調味食品では、その動向を知ることによりタンパク質の加水分解の進行程度や呈味性を判断したり、エキス成分中の窒素の形態をよく知る上でよい指標となります。

手作りみそ 市販赤みそ 市販白みそ
食塩濃度(%) 12.87
アミノ酸態窒素量(%) 0.42
食塩濃度(%) 13.20
アミノ酸態窒素量(%) 0.50
食塩濃度(%) 12.23
アミノ酸態窒素量(%) 0.48
【食塩濃度(%):モール法による】  【アミノ酸態窒素量(%):ホルモール法による】

 手作りしたみそは、市販の赤みそ・白みそと食塩濃度、アミノ酸態窒素量ともにほぼ同じ値でした。ちょうど熟成され食べごろだったようです。

    ※2.アミノ酸態窒素
        アミノ酸を構成する窒素。ペプチド結合をしていない-NH2状態の窒素のこと。
        ここではアミノ酸態窒素が多いほどおいしく熟成されていると考えて下さい。
    ※3.遊離アミノ酸
        タンパク質の構成成分(一般にタンパク質を構成しているアミノ酸のことを結合アミノ酸という)と
        してではなく、個別に存在しているアミノ酸のこと。


●みその健康機能性
 みそに含まれるビタミンEやダイゼイン、サポニン、褐色色素には体内の酸化を防止する作用があります。老化というのは全身の組織や機能の衰えと、細胞レベルのものがありますが、血管や体細胞、脳細胞に過酸化物質が増えると老化が促進されます。
 細胞を若く保つためには、この物質をためないことが大切です。

大豆および主な大豆発酵食品の健康機能性
期待される機能性 大豆 みそ しょうゆ 納豆
 がん抑制  
 抗酸化性
 コレステロール抑制
 血糖値上昇抑制    
 血圧上昇抑制
 骨粗しょう症リスク低減  
 更年期障害軽減    
 抗アレルギー    
 白内障予防      
 血栓溶解      
 整腸      
 ◎:特定健康用食品として許可、 ○:報告あり
 空欄:報告なし(未検討または効果なし)

 みそには160種類以上の微生物が生きていると言われます。
 同じ材料で同じように仕込んでも、発酵の過程でその家に住んでいる菌の影響を受けて独特の味になると言われています。ぜひ、オリジナルのみそを作ってください!



  <引用・参考資料>
     ・酒井健夫・上野川修一 編 :『日本の食を科学する』,朝倉書店(2008)
     ・菅原龍幸 編 :『食品加工実習書』,建帛社(1999)




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