函館短期大学発「食・健・幸」
食を学ぶことは健康を学ぶこと。健康はすべての人が願う幸せ。


  「食の街・函館!」そして「めん(麺)王国・函館!!」
      「教育原理」担当  鈴木 武嗣 教授
コラム No.14 
2008年11月 


 函館は、全国的にも国際観光都市として知られている街です。その人気を支えているのが“函館山からの夜景”をはじめ江戸時代の終焉となった「戊辰(ぼしん)の役」の舞台“五稜郭”、西部地域に点在する歴史的建造物等ですが、ハード面だけではなく、夏の“港まつり”、“野外劇”、冬の“クリスマス・ファンタジー”と各種イベントが人々の心を魅了している側面もあるようです。

 そして、この街の魅力のもう一つは「食の街」であることです。多くの食通の方々がテレビや雑誌で紹介しておりますのでご承知のことでしょうが、寿司(鮨)の美味しさは、使われる食材の新鮮さ、しゃり(飯)の旨さ、職人さんの腕と三拍子そろって全国屈指の味と言えるものです。
 でも別のこだわりを持つ食通の方々はラーメン、特に“塩ラーメン”を函館の味として挙げる方も多いのです。我が国の開港場として欧米は勿論、中国とも交流があった人々の足跡が「めん(麺)王国・函館」の味として現在に息づいていると言うのです。そうした歴史性を考えればさすがに塩ラーメンが美味しい店が多いのもうなずける街です。
 しかし、実は「めん(麺)王国・函館」をガッチリ支えているのが塩ラーメンの存在とともに「そば(蕎麦)」の美味しさなのです。函館は「蕎麦」がとても美味しい街なのです。

 言うまでもなく「蕎麦」と日本人の付き合いは古い時代から続いています。これまでの諸説を総合すると、紀元前1世紀頃にアムール川やバイカル湖付近から中国東北部を経由して我が国に伝わった説と、中国の雲南省など南方地域から伝わったという説があります。いずれにしても弥生時代の遺跡からは蕎麦の種子や蕎麦の花の花粉が出土していますから、弥生人の中には蕎麦を採取したり、栽培したり、食べたりしていたことが推測されています。
 以来、722年(養老6年)には元正天皇により、839年(承和6年)には仁明天皇により、飢饉の際の救荒食糧として蕎麦を栽培するよう勧めがあり(「続日本紀」「続日本後紀」)冷害に強い作物として注目されていたことがわかります。
 そしてその後は、時代の変遷とともに少しずつ庶民の口にもなじむ様になり、16世紀の後半には文献の中に「そばきり」の表現も見られるようになるのです。
 江戸時代に入るや各地に発生した都市では屋台のそば屋や「蕎麦店」が出現し、より多くの庶民に親しまれ、生活と密着した食事として定着してくるのです。
 こうして広がった「蕎麦」は、伝統的な食文化を代表するものとなり、全国各地で様々な行事と結びついたり、地域ならではの食材と組み合わされて「○○そば」などと命名され、人々の生活と密着した健康食として生き永らえているのです。
 私どもの函館短期大学がお世話になっています地域(函館市および周辺の市町)にも数多くのお蕎麦屋さんが営業を続けておられます。少々古くなりますが平成9年に函館麺類飲食業組合から発行された「蕎麦百年」には75軒の蕎麦店が紹介されており、市および周辺の市町村も含めると100店近いお店が営業しておられたと考えられます。

 その全てのお店に出向くことはできないのですが、私自身はかなり足しげく多くのお店に通ってはお蕎麦をいただいております。その結果、函館の蕎麦の美味しさは、かなりの高レベルにあると思われるお店が数多く存在するのです。
 その中から一店を紹介しますと、函館駅から10分程車を走らせた川沿いにあるMというお店です。中央にカウンター席、窓側と壁側にテーブル席を配置し、清潔で落ち着いた雰囲気を伝えてくれています。何よりも気持ちが良いのが、明るい奥さんの「いらっしゃい」という声と、厨房から「よく来てくれました」と目で合図し、手を休めず働いているご主人の存在です。元気な息子さんの働きぶりも気持ちよいものです。出された熱いお茶とともに「今日は、何にしましょうか」「そうだねぇ~、天麩羅そばを1つ。」 お財布の中味と相談しながら、時にはこんな注文もするのです。
 間もなく目の前に大きな海老天麩羅が乗っかったお蕎麦が登場します。箸を二つにパチンと割り、揚げたて熱々の海老天にかぶりつきます。「これが揚げたての旨さだ~」と主張している様な美味なる海老天なのです。続いてお蕎麦を一口二口と口に運びます。何とも言えない幸せな気持ちになるのです。あとはお蕎麦の味を堪能しながらモリモリと食べ進むのですが、蕎麦アレルギーの方には申し訳ない位、美味しさを実感し、食べ終わっても次に来店した時には何を注文しようかと、メニューを眺めたりしているのです。
 そして、やはり「夏はもりそば!に限る。冬は天麩羅そば!がいいんだよなぁ~」などと悦に入っているのです。
 皆さんも「函館・お蕎麦探険」「美味しいお蕎麦・発見食べ歩き」に挑戦されてはいかがですか。毎日毎日お蕎麦だけという連続しての食べ歩きは、美味しいお蕎麦の食べ方としてはふさわしくはありませんのでお勧めできませんが、一日一食、時にはメニューを変えて一日二食・三食のお蕎麦も悪くないものです。
なぜなら、毛細血管を強くして脳出血や出血性の病状に対して予防効果があるとして話題になったルチンが豊富に含まれているのがこのお蕎麦であり、たんぱく質を多く含むバランスの良い優れた食品であることは、既に多くの人々に知られている通りです。

 私の尊敬する、池波正太郎氏の著書「鬼平犯科帳」には、多くの人物往来と江戸の風物詩が情感を込めて描かれております。そこにも主人公や登場人物たちが出入りする「蕎麦屋」があり、いかにも江戸の人々が美味しそうに蕎麦を食べている場面がいくつもあることを思い出しております。

「あぁ、またまたお蕎麦が食べたくなりました。今日のお昼はお蕎麦になることでしょう!」



閉じる

野又学園 函館短期大学  〒042-0955 函館市高丘町52番1号
入試専用フリーダイヤル:0120-57-1820 FAX:0138-59-5549 E-mail:hj@hakodate-jc.ac.jp


Copyright © 2002-2015 Hakodate Junior College. No reproduction or republication without written permission.