函館短期大学発「食・健・幸」
食を学ぶことは健康を学ぶこと。健康はすべての人が願う幸せ。


  いまどきの若者
      学生部長  古旗 英捷 教授
コラム No.11 
2007年12月 


 本年度から「学生部長」の任を仰せつかった。
 任を果たすための理念としてまず、本学の不易なる学園訓「報恩感謝・常識涵養・実践躬行」が脳裏をよぎった。次に浮かんだのは、時代の様相を背景とした「安全・快適」「市民意識の喚起」「法令遵守」ということばであった。「安全・快適」は各地からお預かりしている学生たちが、健康で安全にしかも快適に生活してほしいという願いである。就任早々のインフルエンザや麻疹(はしか)問題、近郊で起きた若者3人の交通事故死事件など記憶に新しい。「市民意識の喚起」というのは、昨今の自己中心思想の中で地域で共に暮らす他者を思いやる心を持ってほしいという願い。具体的には地域貢献としてのボランティアや地域住民の一人として近所に迷惑をかけないゴミ出しなど市民としての意識を養うことである。「法令遵守」を取り上げたのは、「若気の至り」という言葉があるように、これまで学生という身分が故に大目に見られてきたことが、最近、犯罪が低年齢化・凶悪化する傾向の中で、社会で許されなくなってきていると感じているからである。20歳未満の飲酒・飲酒運転や喫煙の問題、自転車の交通ルールと違法駐輪の問題などが挙げられる。

 そうした役目柄、私は学生たちの行動や心にこれまで以上に興味関心を持つようになった。

 ある日、遠隔地からの学生が入居している本学の学生会館が近いS町バス停付近の住民から苦情の電話が入った。「通学のため学生会館から自転車でバス停付近まで来て、近くの空き地に自転車を違法駐輪していく学生がいる。その自転車が空き地から歩道にはみ出し通行人(特にお年寄り)の歩行の邪魔になっているので指導願いたい。」というものであった。直ちに現地見聞を行い学生会館の学生に対し、掲示や口頭で指導した。数日後、ものの見事に10数台あった自転車が空き地から消えた。

 この事実をどう分析するかである。指導の結果であることは間違いない。しかし、その一言で片付けられない何かがあるように指導を通して感じた。それは何か。本学の学生は「素直」であるから。それもそうかもしれない。でもまだ何かある。
 私は、「人の気持ちが分かる」若者が多くいるからではないかと思うのである。それは育ってきた環境で既に身に付いたものかもしれない。あるいは命の源である「食」を学びたいという学生の持つ本来的資質なのかもしれない。つまり、食材を生産する人たちの苦労をイメージできるから、はたまたその食材を手間隙かけておいしく作る人の苦心をイメージできるからであろうか。日常的に本学の学生と接していてそう思うのである。

本学の学生が参加したボランティア
(新はこだて徒歩の旅:2007年7月)
 この事例の場合、「人の気持ちが分かる」とは、「歩道を自転車で遮られて車道に降りて歩くお年寄りの危険をイメージできたと」いうことに他ならない。「自分の自転車が強制的に撤去されれば明日から困るから」という自分中心の考えからだけとは私には思えない。
 もう一つ事例を挙げよう。近年、若者パワーに期待して地域からボランティアの要請が多い。本学ではボランティア体験を取り入れ、単位取得の条件にしている講義がある。当然その講義の単位が必要な学生はボランティアに参加することになるが、その時の意識が問題である。つまり単位のためにという意識だけで参加しているのか、その意識は無いというと嘘になるが、それだけではなくボランティアの目的や内容に心を惹かれ自主的に参加しているのか、という問題である。
 普段は9時からの授業に眠そうにぎりぎりで間に合うという学生なのに、早朝5時集合のボランティアに4時起きをして時間厳守でがんばる姿、また、初めての福祉ボランティア体験に緊張感を持ちながらも明るく取り組む姿など、主催者から良い評価を得、感謝されることが多い。こうした姿は、学生たちがボランティアを待つ人たちの気持ちを大事にして対応している証であろうと思う。本学の学生は極めて多忙な生活を送ってはいるが、今後とも地域貢献という観点からも大いにボランティア活動にも参加して欲しいと願っている。

 いまどきの若者はだめだと否定的にとらえるのではなく、若者の力は未来の幸せを築くのだととらえたい。そのような世間の目によってこそ若者が自らを「自分も世の中で役立っているのだ。」と肯定的にとらえるようになり、他者をも肯定的にとらえる人間に成長していくものと考える。
 学生部長を体験しての実感的若者論の一端である。

本学の学生が参加したボランティア
(新はこだて徒歩の旅:2007年7月)



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