函館短期大学発「食・健・幸」
食を学ぶことは健康を学ぶこと。健康はすべての人が願う幸せ。


  DNAを目で見る
      「栄養生化学実験」担当  沼田 卓也 専任講師
コラム No.8 
2007年3月 

 栄養士の資格を取得するためには、多くの必修科目の単位を修得する必要があります。そのなかには実験を行う科目も幾つか含まれています。本学では、「食品学実験」、「栄養生化学実験」、「解剖生理学実験」、「食品衛生学実験」の4科目がそれに相当します。これらの科目は、自分の手で実験を行うことにより、様々な講義で学んだことをより深く理解する事などを目的としています。
 例えば、この「食・健・幸」コラムの第4回は「栄養学と遺伝子」がテーマでしたが、普段の生活において、実際に遺伝子の本体であるDNAeoxyriboucleic cid , デオキシリボ核酸)を眼にする機会はなく、その存在や重要性を頭では理解していても実感することはできないと思います。しかし実験を行うことにより、それが可能になるのです。
 そこで今回のコラムでは、実際に本学の「栄養生化学実験」の授業におけるDNAに関する実験の回から、その抽出を行った様子を紹介したいと思います。


 試料として、鶏の肝臓やサケの精巣などがDNA抽出実験に良く使われますが、今回はブロッコリーからの抽出を試みました(図1)。
 生物は細胞というものが集まり構成されています(人間の体の場合だと、約60兆個もの細胞で構成されています)。細胞の大きさは約10~30マイクロメートル(1マイクロメートルは1ミリメートルの千分の一の長さ)と大変小さいものですが、DNAはさらにその細胞の中にある核という小さな器官に保管されています。

(図1)

 実験は、まずブロッコリーのつぼみの部分をはさみで切り取って適量集めます。そこにDNAを取り出すために細胞を壊す試薬を加えてすりつぶします(図2)。
(図2)

 次にその溶液に余分な成分(タンパク質など)を除くための試薬を加え、よく混ぜた後、遠心分離機にかけます。するとDNAが含まれている層が一番上に来ます(図3)。
(図3)

 この部分を採取し、試薬を加えてDNAを析出させます(図4)。白く糸状に見えているものがDNAです(実験操作の都合で絡まった状態になっています)。
 このようにDNAは割と簡単な操作で取り出して、自分の目で見ることにより実感することができます。

(図4)

 人間の場合、このようなDNAが46本の染色体の形で細胞の核の中に保管されていますが、この1つの核内に収められているDNAを伸ばしてつなぎ合わせたとしたら約170cmもの長さになります。これほどの長さなのに、絡まることなく小さく折りたたまれて、1つ1つの細胞の核の中に収められています。そして、このDNAの中にはその生物の個体の遺伝情報が含まれているのです。生命の不思議さが感じられると思います。実際の授業では、学生は先ほどの抽出したDNAを使ってさらに実験を続けて、その理解を深めていきます。
 今回紹介したのは、授業で行っている内のほんの一部ですが、学生は座学だけでなく様々な実験も行い、栄養士として必要な科学的な知識を自分のものとしていくのです。


  <参考文献>
     ・相原英孝 他 著 : イラスト生化学入門,東京教学社


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