函館短期大学発「食・健・幸」
食を学ぶことは健康を学ぶこと。健康はすべての人が願う幸せ。


  予防の時代
      「地域福祉と教育」担当  古旗 英捷 教授
コラム No.6 
2006年12月 

 最近、「予防」の重要性が各方面で認識されてきています。世はまさに「予防の時代」と言ってもいいかと思います。

事例1. 介護予防
   お年寄りが寝たきりにならないように日頃から筋肉を鍛えたり、転ばないような動きを訓練したりすることです。そのためにスポーツ施設や教室に通う費用の一部を介護保険で支援するよう制度の改善もされました。寝たきりになってからその対応にかかる介護者のエネルギーや費用は大変なものがあり、寝たきりにならない元気なお年寄りを増やそうというものです。

事例2. 病気予防(生活習慣病)・予防歯科
   健康についてみても、ずいぶんと人々の意識が変わってきたように感じます。マスコミでも頻繁に生活習慣病を取り上げており、日頃から正しい食習慣と適度な運動をすることが極めて大切であるということは、ほとんどの人に周知されつつあります。
 また、「定期健康診断」もずいぶんと普及してきていますが、これも予防的介入といえます。私は、血圧の薬を飲んでいますが、これは一度飲み始めたらやめることなく飲み続けなければならないというもので、初めて飲むときは決断が求められました。そのとき医者の言った言葉が今でも忘れられません。「血管が切れたり詰まったりして倒れてから飲んでは遅いのです。そうならないために飲むのです。」もし病気になれば仕事から離れ、入院・手術など心身ともに参ってしまい、費用もかかります。かの医者の措置はまさに病気予防のための手だてであったわけです。
 歯科医療についてもずいぶんと変わってきているようです。主流は早期発見、早期治療という考えではなく、今は虫歯や歯周病をつくらないようにするという、まさに予防の時代だといわれています。


 前述の「介護予防」や「病気予防」・「歯科予防」などの事例をもとに、もう少し「予防」について考えてみたいと思います。
 例えばお年寄りが寝たきりになったとします。家族はこれからどのように介護していくかを考えます。誰が介護するか、在宅か施設か、どんな介護用品が必要かなど新たな事態に対する「対策」を講じることになります。また、病気になったり虫歯が見つかったりすると、病院に行き「治療」という「対策」を講じます。

小学校でのブラッシング指導の実習
(写真提供:野又学園 函館医療保育専門学校)
 それに対して「予防」とは、そのような悪い事態を生じさせないように気をつけ、前もって防ぐことです。「火災予防」「虫歯予防」などいろいろありますが、「予防」にはいくつかの共通点があるように思われます。
 一つは、実践者の意識の高揚を図らなければならないこと。
 二つには、長期的展望にたち、日常的に継続しなければならないこと。
 三つには、一人でやれないことは無いが、家族や周りの人などの支援、すなわち人との絆(地域力)があればより効果的であること。
の三点です。
 現在、教育においても不審者の学校侵入や登下校の子供の安全、校内における子供のいじめや殺傷事件などが多発しています。新福知子氏は、その著「学校危機への予防・対応マニュアル」の中で、“学校の危機に対して様々なハード面での対策がとられており危機を予防する上で重要なことであります。”と「対策」の重要性を認めながらも、“同様に、危機に陥った時の人の心理を理解してコントロールし、心身に与える被害を最小限に抑えるためのソフト面の充実も次の危機への予防として大変重要なことであります。”(注:要点)と述べており、予防における人の意識(心理)の重要性を強調しています。
 もう一つ「予防」にかかわる事例を挙げれば、地震や台風などの災害に対する予防というのがあります。自然災害であるからあらかじめ防ぐなどということは難しいことではありますが、被害をどう最小限にとどめ、その後の処理をいかにスムーズに行うかをあらかじめ考えておくことは重要なことであると思います。この場合、いかに、経験を通した日常的・継続的な備えが大切か、また、地域の人と絆が大切かを最近の新潟での地震の事例は教えてくれていると思われます。


怪我予防としてのスポーツテーピング実習
(本学講義「運動障害と救急処置」より)

 確かに、事が生じてからの「対策」の積み上げは、経験としてその後の「予防」のために重要な意味を持ちます。しかし、人間はあらかじめ事を起こさないようにするための知恵を持っている動物です。今日、私たちは環境問題としてさまざまな課題を抱えています。その中でも極めて重要なものは、地球温暖化防止であり、地球を守る予防として二酸化炭素などの温室効果ガスの削減が求められています。この大きな問題に対しても私たち人間は、前述した「予防」の底流に流れる三つの共通点、すなわち「意識化」「継続性」「人との絆(地域力)」を解決のささやかな知恵として実践していきたいものであります。


  <参考資料・図書>
     ・新福知子著:学校危機への予防・対応マニュアル,教育出版(2005)


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